どこかで誰かが…
エピソード6
「そいつ、何者なの?」

「飲み屋でバイトしてる大学生」

「ふっ、なにそれ?ナンパ?」

「違うよ。ほら、前に送ってくれた好青年…あの人の先輩。」

「アイツが本命だったんじゃ?」

「だから違うって。」


偶然、電車で一緒になった清瀬と、久しぶりに話ながらの帰り道だった。


「…ま、どーでもいーけど。」

「ね、一目惚れって経験ある?」

「ん?…ない。なんで?」

「一目惚れしたんだって。」

「誰に?」

「私に!」

「…それ、絶対怪しいって。」

「なによ!言っときますけどね、4年も前のことだから!」

「?」

「全然覚えてなかったんだけど、偶然、その場所を歩いた時、その状況を説明されて思い出したの!確かに私も目が離せなかったんだよね…あまりにもイケメンで。そしたらその人、“べ〜”って…」

「なに?」

「私に向かって舌を出したの。」

「なんで?」

「それが、なんでか自分でも分からないんだって。“ガキだったからどうしたらいーのか分からずに、咄嗟にやったことだろう”って…あとになって、声をかけなかったことに後悔したって言うんだけど、あの“べ〜”があったから、私達、つきあってんだなぁって思うと、運命を感じちゃうって言うか…」

「でも、おまえは忘れてたんだろ?」

「…そうだけど…」

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