素直の方が好きですか?

運命



その日の朝は(正確には午前中)準備を始めた。

もう、時間切れだ。
智葉は来なかった。

約束を、果たしに来なかった。

婚約指輪、勿体無いから一応持っていこう。
それから……。

いるものといらないものを整理し、カバンに詰める。

母さんの言った通りになってしまった。

「さて、と」

行くか。
この家とも、さよならか。

改めてそう思うと少し悲しいな。

未練を残しつつもそれを振り切り駅に向かった。


もう、俺も社会人になるんだな。
変な感じだ。

スーツきて、電車乗って会社に向かう。

そんな大人になるんだな。


「想、ちゃん?」

「お前らは……」

「懐かしいねぇ、ね、りーちゃん!」

「あ、ああ、うん、ひ、久しぶり!」

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