人はそれを恋と呼ぶ


それからしばらく、あたしの頭の中は彼の事が占めていた。


あれから、しばらくゆーちゃんは来てくれなくて。心配だった。


夏風邪でもひいたのかな…とか、やっぱり家は遠いのかな…とか。


考える事は彼のことばかり。


「…お前も、寂しい…?」


夕暮れ、隣家の庭に勝手に入り、犬の頭を撫でながら呟いた。


「会いたいね…」


きっと、ゆーちゃんはこんな風に自分を想ってる女がいるなんて知らなくて。


馬鹿みたいに声だけの彼に恋をした、あたしの存在さえ知らなくて。




…これが恋なの?


こんな風に、何もできない自分が大嫌いなのに…


あたしには彼に話しかける勇気さえ、ない。


< 118 / 165 >

この作品をシェア

pagetop