人はそれを恋と呼ぶ


教室を出て、階段を急いで駆け降りる。


その時すれ違ったのは、同じクラスの女の子。


「…どうした?教室もどんの?」


振り返って俺を見て、恥ずかしそうに微笑んだ彼女は、今まさにケンタと話していた川嶋。


「あー木下君。うん、忘れ物したんだ。うっかりして」


やったな、ケンタ。


チャンス到来じゃん。


定期入れをひらひらとかかげた俺。


「俺も忘れ物!じゃな、気をつけて帰れよ!」

「うん、ありがとー!じゃあね、また明日」


パタパタと教室に走って行く川嶋の後ろ姿を眺めながら自然と口元が緩んだ。


頑張れ、ケンタ。


さて、俺も…


気難しいお姫様を迎えに行きますか。



早く、早く、会いたい。


好きだって言いたい。


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