愛のため息

『タカちゃんいいの』




「でも！」




怒りの収まらない俺にミイはもう一度いいの、と繰り返す。




そして村田に向き直り





『村田さん、私とタカちゃんは村田さんが思ってるような関係ではないですよ』



怒ったり責めるような口調ではなく静かにそう言った。




諭すように話す姿は年相応よりも大人びて見えて思わず目を見張る。




『あ、俺…』




村田は自分の失言にようやく気付いたらしいが、うまい言い訳が浮かばないようだった。




『タカちゃんと私は昔からのご近所付き合いしてて、何故ここにいるかは今日がホワイトデーだからです』




『…ホワイトデー？』




聞き返す村田に微笑むミイはやっぱりいつもよりも大人びて見えて。




ミイが急に遠くにいってしまったように感じる。




『バレンタインのお返しは美味しいコーヒーを飲みに行きたいってタカちゃんにお願いしたんです。

でも、そのせいでタカちゃんにもタカちゃんの職場の人にもイヤな思いさせちゃったみたい。

タカちゃん、ゴメンね？』