嘘つき⑤【-sign-】
この人だって思える出会いなんてそうそう落ちてない。
傷を癒やす為に、違う誰かに抱かれるなんて馬鹿げてるって思う冷静さはあるのに、
「この後、一緒に飲み直しませんか?」
少し赤い顔、その言葉の裏には邪なものがないような気さえする遠慮がちな瞳。
ある程度お酒が入ってしまえば、銀行員さんの声に、
「別に、いいですよ」
ニコリと頷く自分が理解できない。
だけど、体に巡るアルコールの熱は心地よくて、真実誰かのぬくもりに触れたかった。
触れたい人はもう傍にいないから。