嘘つき⑤【-sign-】

里穂は呆れたため息と一緒に、「連絡待ってるみたいだよ?なんとかしなさいよ」と言葉を落とす。

「結城君、いい人だし、申し分ないと思うんだけどなー」


里穂は気を取り直したようにあたしに向き直ってから、覗き込むようにそう言った。


「…うん、分かってるんだけどねー」



名前さえ覚えてなかったあたしが、彼の何が『分かって』いるのか。




「魂抜けたみたいな顔しちゃって!!ま、一度連絡してみなよ」



里穂はあたしの背中を叩いて快活に笑った。


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