嘘つき⑤【-sign-】


* * *

「どうよ、天童女史は」

ランチタイム、社員食堂に足を向けたあたしと里穂。里穂はクリっとした瞳を興味の色に変えている。


「…どうって言われても、ねぇ」


あれから、天童さんと短い仕事の会話をして、会議室を出る頃には初めに感じた距離は近づく事はないなと実感したくらい。


大体、仕事が出来るオーラが強すぎる。冷めた雰囲気は部長によく似ていて、当たり前の様に彼の隣に並ぶ姿に舌打ちしたくなるのはただの嫉妬なのかなんなのか



結果的にいうと…



「気に入らないんだ?」



里穂はあたしをからかうように見つめて、食堂一番人気のメンチカツをパクリと口に入れた。


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