嘘つき⑤【-sign-】

彼のベールを纏った様な感情に触れられたと思っていた。その温度に触れた事で、冷静でいつだって感情を表に出さない部長の空気を分かったつもりだったのかもしれない。


それが、ただの驕りだと気付かされるのは、一瞬。
冷たい、突き放す瞳に、自嘲した笑み。侵される事を完全に拒んだ一律した態度は、出会った時から寸分も違わないのに。



どうしたいのかなんて、自分でも分からないから答えが欲しいのに。結局満足いく答えなんてない事を知っていて、見ないふりをする。



胸が苦しくて、つらくて、もう何もかも、忘れてしまいたいよ。


< 81 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop