嘘つき⑤【-sign-】
■大原 琴音side■
◇琴音side◇
恭平さんに視線を合わせる冴木さん。
義務的な挨拶が済んで、私は彼女の横でにこやかな笑顔を向ける男性の存在を捉える。
誰かと一緒なのは当たり前なのに、何故、少し動揺してしまったのか。その理由は知らない。
今こうして、冴木さんと向き合っている事自体、不思議な感覚で包まれているから。
そう、まるで、
あの日の事を忘れないように、また心が、悲鳴をあげてしまえと疼く。
恭平さんと冴木さんの会話に間があって、一瞬冴木さんと視線が交差した。