恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「俺の母親は、人間だった。

俺もそんなに覚えてるわけじゃないけど……、いつも自分の気持ちに真っ直ぐな人だった。

母さんが亡くなったのは俺が10歳の頃で、父さんはそんな母さんを追って……自ら命を絶った」


それは、思っていた以上に衝撃的な話だった。

藍川の両親が亡くなっているって事は知ってたけど、だけどお父さんが自殺だったなんて……。

何も言えずにいると、藍川が続ける。


「それはヴァンパイア界にとっても衝撃的な事件だった。

王家の血を直接受け継いでいる、唯一のヴァンパイアである父さんが自殺したんだから、それも無理もないけど。

ヴァンパイア界にはいくつか階級があって、それをまとめられる力を持っているのが王家の血だった。

王家の血を受け継ぐヴァンパイアがいるからこそ、均衡が守られていたのに……その位置にいた父さんが急に死んで。

後任者に選ばれたのは、俺だった」




< 172 / 343 >

この作品をシェア

pagetop