恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「人間は、ヴァンパイアなんか血だったら誰のでもいいと思ってるだろうけど、そうでもないんだ。

頑丈な分、結構純粋で、吸血行為は愛情表現の一種くらいに思ってる。

好きになった女の血の味を知ったら、他のやつの血なんか、比べ物にならない」


カーテンの外がじょじょに明るくなる。

雲に隠れていた太陽が出てきたみたいで、柔らかい山吹色に染まった教室が、藍川の表情を明るくさせる。

藍川は、少しだけ微笑みながら言う。


「父さんは母さんを本気で愛してたから。

他のやつの血を飲む気にはなれなかったんだろ。

もしかしたら裏切り行為くらいに感じてたのかもしれない。

たいしたもんだよ。血欲しさに自分が吸血衝動に駆られる前に、自分で命を絶ったんだから」

「え……じゃあ、お父さんはお母さんを裏切らないために、自ら……?」


本能に身体が動かされる前に、自分でその命を……?

そんな思いから聞くと、藍川は口許だけ微笑ませて目を伏せた。






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