恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第十三章】
『俺の母親が人間だって話は前しただろ?』
結局食べなかったアイスを冷蔵庫に入れて、紫貴の部屋に戻った。
そして、床に腰を下ろした紫貴は、ベッドに背中を預けながらそう切り出した。
『うん』
紫貴の隣に、同じような格好をして座りながら頷く。
机用の小さなライトだけが灯る部屋は、静かで落ち着いた雰囲気だった。
『父さんの一目惚れだったらしい。
それに母さんが答えたんだけど……その時既に、父さんには決められた婚約者がいたんだ』
『婚約者……? あ、王家だとかそういう関係で?』
婚約者が決められてるなんて、普通の家庭じゃあまりない事。
だけど、紫貴の家柄を考えれば納得もできる。