恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


灰斗さんは軽く笑ったつもりだったのかもしれない。


けど……、それは、見ていて胸が打たれるような笑顔だった。

つらさを我慢したような、そんな微笑みは、紫貴を連想させる。


隣を見ると、紫貴は灰斗さんを真っ直ぐに見ていた。

そして、聞く。


「美朱を殺したのは……」

「……俺。だって、俺、美朱が生きてたら、ずっと恨みながら生きていかなくちゃだったから。

憎みながら生きるのって、ダメだって言われたばかりだったし。

いい加減、美朱にもうんざりしてたんだ」

「……」


しん、とした冷たい空気が部屋に流れる。


寒くないのに、でも確かに冷たく感じた。

色々な感情が入り混じって、とても悲しく……心まで冷たくなる。



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