恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「3-Eの岸田も同じような事考えてたって気付いてないだろ。
この先にある住宅街の一角で桃井に迫って告白の返事を無理やりさせようとしてた」
「なんで、知ってるの……? っていうか、なんで新井くんとの事も臼田くんとの事も知ってるの?」
「言っただろ。帰り道だって」
帰り道って……。
きっぱりと言われて思わずぐっと黙ったけど、新井くんと臼井くんとの事は偶然見てたとしても、岸田くんのはおかしい。
まだ行動に移してないんだから。
岸田くんが藍川に相談したとかしか考えられないけど……それは絶対にありえないし。
そんなあたしの疑問が聞こえたみたいに、藍川が答える。
「もう一つの答えは……聞こえたから。岸田の声が」
あたしを観察するみたいに、じっと見つめながら言う藍川。
地面から吹き上がるようなふわりとした風が、藍川の黒髪を揺らして、紫色の瞳を露にした。
……聞こえたから?