恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


2階にあるのは、あたしの部屋と空き部屋だけ。

空き部屋は荷物置き場になっていて、月に何度か、おばさんが空気の入れ替えをしてる。


ただそれだけで、別になんて事ないのに……何かが引っかかるような気がする。


だけどその何かが分からなくて。

リビングに降りたせいでまた一つ増えてしまった、もやもやする考え事。


その事にため息をつきながら部屋に入ってドアを閉めた。


毎日この部屋で過ごしているのに。

その中で、こんな風に違和感を感じた事なんてなかったのに。


抜き取られた写真だとか、消えた卒業アルバムだとか……。

向かいにある空き部屋だとかが、あたしに何かを伝えてる気がする。



こうなった原因の藍川の瞳が思い出されて、ドキンと胸が高鳴った。

……トクトクする胸が、なぜか切なかった。



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