誘惑プリンセス【BL】
 
「俺とキスしたくないの?」


 したくない訳がない。

 ただ、なんて言うか……心の準備ってヤツが……。


「わ、分かった。ベッド買おう。隣の部屋片付けて、そこに置こう」

「……誤魔化すなよ。でも、買うって言ったよな。今日買いに行こうぜ」

「今日!?」

「このベッド狭い」


 ちゅ、と軽いキスが落とされる。


「ソレはソレで萌えるけど、やっぱ少しでも広い方がイイじゃん」


 ニヤと笑んだヒメが、俺の頬に手を添えてくる。


「恭介」


 視線と同様、何だか熱の籠った声色で呼ばれて、どくりと心臓が跳ね上がる。

 ヒメの気を反らそうと提案してみたけど、やっぱりダメだったようだ。

 ゆっくりと重なる唇は、俺を求めるように動いて、俺からヒメを求めるのを促している。

 この誘惑に乗ったら、どうなってしまうのか。

 それには気付かないフリをして、俺はヒメの背中に腕を回した。

 どんなに御託を並べても、俺だって男だ。

 好きなヤツに触れたくない訳がない。

 その先にある事に不安がない訳じゃないけど、今は嬉しさや幸せの方が遥かに上だ。

 応えるように唇を動かせば、それに満足したようにヒメが身体を預けて来る。

 この際、思い切ってヒメの熱い誘惑に乗るのも悪くない。

 もう、ヒメを拒む理由なんて俺には無いんだから──。


#6 誘惑プリンセス fin
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