誘惑プリンセス【BL】
「いってぇ……」

「背中、弱いんだ?」

「誰だって背中はくすぐったいだろ!」

「俺平気だし」


 勝ち誇った様にベッドを占領するヒメは、もしかしたら俺をそこから追い出したかっただけかもしれない。

 さっき言ったことも、きっと、俺の動揺を誘うために決まってる!


 ヒメが好き=俺の弱み


 冷静になって考えてみると、何でヒメなんかが好きなんだろう、って思う。

 だけど。


「なぁ、恭介。今日の朝メシ、卵焼き作って。甘いヤツ」


 被った布団の隙間から顔だけを覗かせて、子犬みたいなキラキラした目で俺を見詰めてくる。


「……分かった」


 自分で自分が嫌になるんだけど。

 俺、ヒメの顔がもの凄く好きなんだ。

 笑った顔も、スネてる顔も、怒ってる時のも、とにかく、全部。

 見ていて飽きない。

 可愛いとか、思ってしまう。


 つか、顔が好き、って言うのも言われるのも……嫌、だよな?


 俺は、嫌だ。


 でも、好きなんだから、仕方ない。

 ヒメには、絶対に黙っておこう。
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