誘惑プリンセス【BL】
 輸入モノのインテリアショップを見付けると、ヒメは俺の腕を引いてニヤと笑みを見せた。


「なあ、ベッド……」

「買わないぞ」

「恭介って潔癖症?」

「そういう訳じゃないけど……」

「俺に魅力が足りない?」


 首を傾げて上目遣い。

 魅力なんて、充分です。


「魅力とかそーゆーのじゃなくてさ」


 何て言ったら、ヒメに伝わるだろうか。


 行き摺りの関係というか、その場凌ぎというか。

 勢いみたいなのは、嫌な訳で。


 ちゃんと順を踏んだ上で、お互いの気持ちが通じあった上で、そういう関係になりたいと思うんだ。


 いっそのこと、俺がちゃんとヒメに気持ちを伝えれば……いや、そこでヒメがNOと言う可能性を忘れちゃいけない。


 ヒメは気分屋だし、何かに縛られるのを嫌いそう、だよな。

 朧さんとのこともあるし、曖昧な関係で居る方が、気持ち的にも楽なのか?

 俺だったら嫌だけど。

 でも、NOと言われるのが怖くて言えない、という訳でもない。

 言わないでいる事に、意味なんて、無いんだ。


 やっぱり俺は、曖昧なままなんて──嫌だ。
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