誘惑プリンセス【BL】
 ここに居るのだって、行くところが無いってだけで、俺のことが好きだから、って訳じゃ無いんだし。

 それに、ヒメに同じ気持ちを返して貰いたいとは……それほど思ってない。

 俺が勝手にヒメを好きなんだし。


 そんな今、ヒメとセックスなんてしてしまった日には、俺は絶対に後悔すると思う。

 俺は、朧さんの代わりにはなれないし、なりたくもない。


「つーか、ベッド買わないってことは、恭介に抱き付いて寝て良いんだ?」

「……布団で寝てくれ」


 なんかもう、ヒメの中では『俺と寝る』のが前提になっているみたいだ。

 ヒメはどこかの居酒屋だかバーで働き出したのか、夕方から夜中までは外出している。

 だから、まだ一度も『一緒にベッドに入って寝る』っていう恥ずかしい状況には遭遇していない。

 気が付くと、隣に居るんだ。

 ヒメが入ってくるのに気付かない自分もどうかと思うが、こればっかりは仕方ない……って思ってる。


 ヒメのリクエスト通りに卵焼きを作ってテーブルに置くと、もそもそとヒメがベッドから降りてくる。

 眠そうにあくびをして、伸びをひとつ。


「眠いならまだ寝てればいいのに」

「メシは作りたてのがウマイだろ」


 ベッドの他にもうひとつ。

 ヒメは、俺が居るときは一緒に飯を食いたがる。

 食欲が満たされたら、またベッドに戻っていくんだ。

 つか、そのまま寝るんだろ?

 1人で寝れんじゃん。

 嘘つきめ。


 ベッドなんて、絶対に買い換えないからな!



< 9 / 171 >

この作品をシェア

pagetop