携帯小説的恋
「どうした、順?」

ぼおっと、三人の後姿を見つめるあたしに気が付いて、月人君が覗きこんできた。

「え、あぁ、あたし一人っ子だから、

姉弟って羨ましいなぁって」

「そうかぁ~

俺は姉貴がいるけど、ちっとも羨ましくなんてねぇぞ。

うざいだけだ」

「そういう風に思える相手がいるってことが羨ましいんだよ」

ふぅん、そんなもんかぁ、と呟きながら月人君が器用にレジャーシートを畳んでくれた。

「また食いてぇな、順の弁当」

芝生と青空を背に、笑顔でそう言われて……

あまりの眩しさに、あたしは、

「うん」

と頷くだけで誠意一杯だった。

桃花ちゃん、

やっぱりわたし修行が足りません。

ここは、

嗚呼、そのうちね……

とか、軽くいなす場面だった筈。

佐々木順、

月人君に心の操縦桿を握られてます。
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