王様と料理人
「ホントに?」

「嘘ついてどうするんですか?」

それより腰から離れてほしい。

背後から耳元で話されるのも落ち着かない。

腰に回った腕をチラリと見ると。

「トーコちゃん。」

同じタイミングで、再び腕にチカラが入った。

「…なんですか。」

「手作りのお菓子渡したの?」

「手作りじゃありません。レシピだけ提供して、チャドさん達に作っていただいたモノです。」

「…そう。良かった。」

ぽす、と肩にゆるい衝撃。

目の端にはラウル様のつんつんとした金髪が映った。

なんだこの体勢。

「よく分かりませんが、納得したなら離れてください。助けていただいて有難うございました。」

身を捩って逃れようと試みる…が、そう簡単には振りほどけない。

「……ねぇ、トーコちゃん。」

またしても耳元で響く声。


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