─ Alice ?─


「ふあ…。」

なんだか気が抜けてしまった。


やっぱり帽子屋さんは
紳士だったな…


ボーっとそんなことを考えていると、日が沈んでいることに気づいた。



…嗚呼、森野宿。




「……。」


カアァ…カアァ…

「……へ、平気よ平気。」


バサッバサッ…


「………怖くないもんねー。」

ガサガサ…ガサ…


「だ、誰かあー…」


無理だよ確実に!!私女の子だよ!?
こんな不気味な森で野宿なんて出来ないわよ!



「ヴー…どうしよう……ん?」



少し戻ったところに
キラキラと輝く何かが見える。


月の光を浴び、宝石のように
美しく輝くその何かに
惹き付けられるかのように、
足が動きだしていた。



「あっ……!!」


輝いていたのは先程目にした
薄紅の一輪の薔薇だった。



そして【紅】い薔薇と蔓が森から私を守るかのように包み込んでいた。



「ディー…ダム…それにこの薔薇たちは帽子屋さんの…」


ああ、そうか。


帽子屋さん。貴方って本当に紳士だわ。


直接守ることはできないけれど
遠くから、私のことを守ろうとしてくれているのね。



ありがとう。



嬉しくて涙が零れる。


私は薔薇たちに見守られながら
深い眠りについた。



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