─ Alice ?─
「──違うよ。」
違う。違う違う違う違う!!!
私が好きなチェシャ猫はこんなじゃない。
私が好きなチェシャ猫は…
いつも気だるそうにしていたけれど、とても優しくて
私のことをいつでも守ってくれて
私のことを見守ってくれていた
私の好きなチェシャ猫は
こんなチェシャ猫じゃない。
「嫌。離して。貴方、私の好きなチェシャ猫じゃないわ。」
腕をふりほどき、数歩後ろに下がった。
暫く唖然とした顔で私を見つめるチェシャ猫だったが、急に俯き、クックッと笑いを堪えたような声を漏らしだした。
「馬鹿だなあ、アリス。
今さらそんなこと言っても無駄なんだよ。
お前は俺を選んだ。それは覆すことは不可能な真実。
例えそれが仕組まれたことだとしても、アリスは俺を選んだことに嘘はない。」