ワ ス レ ナ グ サ 。


『なんで?』

『え?』

『勿忘草。なんで好きなの?』

京香はしばらく考えて言った。

『…花言葉、がよかったのかも』

『へぇ。どんな花言葉?』

すると京香は、また考えて、

『…忘れちゃった!!(笑)』

『なんだよそれ(笑)』

勿忘草。

京香の好きな花。

また一つ、京香のことを知れた気がした。

また自転車をこいで行くと、海に出た。

『和也っ!!見て、海だよっ!?』

『知ってるよ(笑)』

京香は、履いていたパンプスをぬいで、海にそっと足をいれた。


『冷たーい!!』

京香は、冷たい冷たいなんて言いながらも楽しそうで。

俺は、そんな京香を愛おしく思いながら、見つめていた。

『…あ、』

『どうしたの?』

俺は、あることを思い出した。

『明日から、しばらく会えない…』

『…え…っ、』

笑顔だったキミの顔が、だんだんと曇っていく。

『しばらくって?』

『たぶん、2.3日』


『どうして…?』

その質問に、俺は答えなかった。

いまはまだ言えないから。

京香の瞳は、涙でいっぱいだった。

俺は、京香の顔を両手で包んだ。

顔と顔の距離が、だんだんと縮まっていく。

どちらからともなく、目を閉じた。

唇に柔らかい感触を感じた。

『またすぐに会えるよ。』

俺は、京香を安心させるように笑顔を見せた。

『電話してよね?』

たった2.3日なのに、京香は永遠の別れのような顔をしている。

『じゃぁね。』

『あぁ。』

そうして、俺らは家に帰った。

また、俺らは

小さな約束をした。



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