雪情
【存在せぬものー12】


どうすれば
納得してくれるの
だろうか?






何とか大久保が
説得してくれることを、

田崎は祈るしかなかった






そう思った瞬間、

突然外のドアが
勢い良く開いた。






見ると
大久保が息を切らせて
立っている。





何かあったのだろうか?






「た、大変です!!

か、か、川上さんが!!!」





「どうしたのかね!?」






「いいから!
き、き、来て下さい!!」






声が裏返る程の奇声を上げ、

小屋の方に
指を指した大久保の手は
震えていた。




只事ではない。






白井もその大声に

ビックリし
起き上がっている。






それを聞くと
田崎は飛び出した。

が、それより先に
小川が飛び出していた。






何かあったのかと、
小川は必死に
川上の名前を呼びながら
走っている。







吹雪で
田崎が見失いそうに
なりそうなくらい、

小川は懸命に走った。





なんとか小川を見失わず
二人は小屋に着いた。





大久保や白井は、
まだ追いついて来ない。






小屋を見ると
ドアは開けたままに
なっていた。






「大丈夫か!!」





と小川は中に入った。

が目の前の光景に
呆然と立ち尽くしている






田崎も中に入ると、
信じられない光景を
目のあたりにする。





そこには
胸から血を垂れ流した
黒髪の女性が

横たわっていた。






近くで見て
顔を確認すると―――







――間違いない

川上であった。







降り続く吹雪は、

更に勢いを増した……
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