比丘尼の残夢【完】
それに比べたら、死ぬ前にこんな美味しいものが食べられたら幸せなのではなかろうか。


「いや、別に」

「これ冗談じゃないかもよ?」

「良いです。美味しいものたべれるし」

「食い気かよ」

そうとも言うか。
お恥ずかしい... 。


ご主人様は呆れたように笑った。

それからこれも食え、と食事を半分以上私に寄越した。


「病気なのは本当。俺が死にそうになったら、玄関の火災報知機押して。医者が来ることになってる」

「あい、わかりました」

ホントの火事の時はどうしたら良いのか。


「うつるのは嘘。お見舞いやらいろいろ面倒だから、伝染病ってことになってる」

「へぇ〜、なんか酷くないですか? 病人なのにそんな扱い可哀想」

もぐもぐ。これなんだろう?

死んだじーちゃんにも食べさせてあげたかった。
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