比丘尼の残夢【完】

※scene12『見果てぬ夢の果て』

次の検診でやってきた医者は、「今日は薬物中毒者に異国の新薬を試しに来ました」と嘯いていた。


「宇治方様! 聞いてください!!」

医者が来るのを待っていたのだ。

早く手術をして欲しい、早くご主人様に元気になってもらいたい。


ご主人様が手術を受ける気になってくれたと興奮して伝えると、喜ぶとばかり思っていた医者は鋼鉄の無表情を一瞬曇らせた。


なんだ?今の顔は。


「これでジャンキー卒業ですよね!」

「... そうだな。ちょっと話してみるよ」

医者はチラリと自分の腕時計を見た。

押し付けられたお土産の包は、私の大好きな最中!

それを見たとたん、医者の表情のことなんて忘れた。


「キャー! 有難うごぜえますっ」

「これは自分で食うんだ。茶を入れてきてくれ」

「へぇ!」
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