Painful Love※修正完了※

あれも、拓斗のせいだった。


拓斗がエレベーターにまつわる怖い話ばっかりして来たから、


それが頭の中に強く残って怖くなって。



乗れなくなって暑いのに階段を頑張って上ってたなぁ……。


こうして、時々思い出すエピソードの殆どに拓斗が出てくる。

それだけ、常に一緒にいたから。


でも、これからは違う。


佐奈子さんと、



一緒に幸せになって欲しい。


約束なんか、わたしの事なんか忘れて。


だけど……

たまに、


何年に1回でも良いから思い出して欲しいなんて矛盾した事を思ってしまうわたしは本当に馬鹿だと思う。

嬉しかったんだよね。



何年も会ってなかったのに、

拓斗が毎年お父さん達のお墓に来てくれていた事も。



帰ってこい、って言ってくれた事も。



叔母さん、どこに出かけたのか分からないけれど、帰ってきたら明日帰る事を伝えなきゃ。


叔父さんにも。



長年お世話になった家だし、少しはお礼の意味も含めて掃除してから帰ろうかな。






今日から明日まで、限られた時間を計算しながら、これからの予定を考える。





エレベーターは、わたしが指定した階で止まるとゆっくり開く。

外の空気にまた触れて、エレベーター内のひんやりとした空気からまた生暖かくなった気持ち悪さに顔が歪んだ。





  ――第6章 別れ――







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