今夜,君と…。
「…俺。好きな奴できた。」


「……」


「ごめん!お前のことは大事やけど…ちなつ…ほっとかれへん。それに俺ら付き合ってても同じことばっか繰り返すし…。絶対お前のこと,また…殴ってまうし……」


「……」


「…お互い…幸せになろうや…。」

涙は出ない。

あたしはカバンを持って部屋を出た。

ドアを閉めたとき亮平が泣きながら電話する声が聞こえた。






家には帰りたくない。

一人は嫌だ。

明るくて賑やかなとこにいきたいけど,もう夜も遅いし。

「…あ。」

あたしは夢新地に向かった。

眠らない街だから。
きっと寂しくない。

配達中に見つけたあの場所に行こう。



賑わいの中,こっそり身をひそめるあたしに誰も気付かない。






でも。






いたんだよ。







雑踏の中,ただひとり。




あたしを見つけてくれた人。
< 28 / 93 >

この作品をシェア

pagetop