恋~れんごく~獄
武浩がたどり着いた場所とは、大学キャンパス内の図書館であった。無意識の内に大学に舞い戻って来ていたらしい。
何気なく携帯電話で時間を確認する。


-17時46分-


図書館は、18時閉館だ。しかし、それが人の心理か、後少しと言われれば、逆らいたくなるもので、何でもいい、暇つぶしに普段は読まぬ本の一つでも借りてやろうという気に武浩はなった。


-ぎい…-


へえ、中々この扉のさび具合、いいじゃん、などと、妙な所に感動を覚えながら中に入り、残り数10分という制限時間の中で借りる本を探す事にした。
…未知の世界には、未知の人々がいた。誰もかれもが、気難しい本を傍らに置いて、何やら文章を書いている。
実は今、卒論提出のラッシュ時期で、特に今の時間帯は、そういった就職活動真っ最中の四回生ばかりが図書館に残っていたのだった。必死の形相で皆、自分自身を追い込んでいる。


-ご愁傷様。-


心のなかで失礼にもその人々に対して武浩はつぶやき、お目当ての本を探し始めた。
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