女社長は12歳
その1時間後、良造ときららを乗せた黒塗りの車が倉田商事に到着した。

「さて、ではいくかの」

会社に着くと良造は社長室には寄らず、まっすぐ例の会議室へと向かった。

あのいまわしい社長発表が行なわれた部屋だ。

きららにとってはトラウマとなりそうな、実に嫌な雰囲気を感じる。

部屋に入ると、もうすでに幹部が五人、席についていた。

幹部達は良造が入室すると一斉に起立し良造に頭を下げた。

「社長、おはようございます」

「おう、おはよう。みな、待たせたのう」

幹部達は、続いてきららのほうを向いた。

「次期社長、おはようございます」

「……おはようございます……」

きららは、申し訳なさそうに小声で挨拶を返し、良造のあとを背中を小さくしながら歩く。

良造は席につき、続いてきららも席についた。

起立していた幹部達も、それを見て椅子に腰を下ろす。

「さて、先日はいきなりでなんだったので、きららも何がなんだかわからなかったじゃろう、改めてみなの顔をおぼえてもらおうと思ってのう」

――いきなりにも程があるよ……

きららはうらめしそうな目線を良造に向けた。
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