放課後。



掃除を終えて帰ろうとしたら、
廊下で呼び止められた。



『ウッド先生』に。



「さようなら」
「ちょっと待て岡崎」


先生の声には少し
苛立ちが混ざっていた。




「お前、この前の授業のテスト」

「それが、なんですか」

「あの点数で、考査大丈夫か?」



授業のテストというのは、
単言ごとに行うテストのこと。



「11点」

「はい」

「簡単な単語くらい書けるようにしろよ?」



苛々する。


大学なんて考えてないし、
だから勉強できないのは
当たり前じゃないか。


なのにどうして
言われなきゃいけない?




「私、大学行かないんですよ。だから放っておいてください」

「行かない?」

「はい」

「やれば出来るのに……勿体ないな」






もう嫌。






「私が大学に行かないのはやる気の問題じゃなくてお金の問題なんです」

「それなら奨学金だっていくらでも……」

「さようなら」



私は先生の話を遮り
早歩きでその場を去った。





校門を出て、耳に
イヤホンをした。

大音量で曲を流す。

私はいつもこの方法で
自分を落ち着かせている。




「なんなの……本当」




悔しかった。


成績のことを言われて
悔しかったのではない。





努力していないことを
あの人の言葉で思い知らされた


お金の問題なんだって
環境のせいにしていた


頑張ればどうすること
だって出来るのに


逃げていた





「今までこんなこと、何度も言われてきたじゃないか」





なのに、どうしてこんなに
腹が立つのだろう。





今から間に合う訳が
ないんだよ。今更。





そう言い聞かせて
大音量で響く音楽に
意識を任せた。
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