君の瞳が愛をささやく
いや…


「莉緒は俺の為に…」


莉緒はいつだって俺の為を想ってくれてた。


だから…


「陸兄…
許してやって?
姉さんもこんな別れは望んでなかったよ…
でも…」


臣は今にも泣き出しそうに俯いた。


「…分かってる。
臣、ありがとな?」


俺が言うと、臣は哀しそうに微笑んで黙り込んでしまった。


そのあと、俺は手紙をにぎりしめて中野家を後にした。


莉緒のいない中野家はどこか寂しそうな、妙な静けさが辺りを包んでいた。


俺は暗くなった道を歩きながら、握りしめたままの手紙を見つめた。


…強くなろう。


強くなって、莉緒を全て包み込めるくらいになって、それで莉緒を待っていよう。
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