バンビ
どうしようもない恋の唄
カオリさんと駅で別れた後は、どうやって帰ってきたんだかうろ覚えだった。


うちに帰ると、モモはおじいちゃんの所に泊まりに行っているらしく、父さんもまだ仕事から帰ってきていないみたい。


母さんが、今まさに夜遊びに行こうとしてたみたいな感じで、いつも束ねている髪を下ろして、スリムジーンズにヒスグラのTシャツを着て、化粧をしていた。



「レンお帰り~♪
今夜も友達のとこに、泊まってくるのかと思ってたよ。」



「昨日泊まってきちゃったし、終電まだあったからかえってきた。」


それだけ母さんに伝えると、風呂に入って寝るからってさっさと自分の部屋に行った。




今夜は、僕一人で留守番かな?

そんなの珍しいよな。




うちはいつも、誰かしらいてにぎやかだから、プライベートな時間なんてほとんどなかった。

それが凄く嫌で、小さい頃は早く自分だけの部屋が欲しいって思ってたけど、実際自分の部屋ができた後でもドアにカギもつけてくれなくて、何となくいつ家族が自分の部屋に入ってきてもおかしくないような環境にならされていた。


だから、何となく今夜はワクワクする。





さっき勢いに任せて、カオリさんに告ッちゃったからな・・・





色々一人で考えたいことが、山ずみだ。






酔っぱらってちょっとぼんやりしていたけど、何とか風呂に入ってキッチンに飲み物を取りに行ったら、母さんが丁度出かけるところだった。




「ちゃんと戸締りしてね、なんかあったらすぐ電話するんだよ。
お父さんが帰ってくる頃までには、私も帰ってくるからね。」



いってらっしゃいというと、母さんは嬉しそうに手をひらひらさせて、いそいそと出かけていってしまった。


まあいつものクラヴ遊びだから、気にしてないけどね。


ただ、いつもはモモと一緒だから、ちょっと変な感じ。




さて、一人でしか出来ないことでも、思いっきりするかな?
< 89 / 266 >

この作品をシェア

pagetop