夜明け前の桜道
戸惑い。
「たく…朝っぱらから、叫ばないでよね…恥ずかしいわ」

「わ…わりぃ…」

溜め息を吐いて呆れかえる私を、チラリと見て、申し訳なさそうに頭をかきながら、平謝りをする。

「でも、仕方ないと思うよ〜?だって、明徳は、咲良のことが好きなんだもん。それなのに、急に男の子が居候して来たらビックリもしたくなるわよね」

段々、頬を赤く染まっていく明徳に、私はキョトンとした。

ーえ……?明徳が私を…好き?ー


「沙羅…!お前、何で…」
「何で知ってるのかって?…そりゃあ、誰だって見てたら分かるわよぉ〜」
クスクスと、楽しげに微笑む。

私は、戸惑っていた…。
今まで、幼なじみとしか思ってなかった相手が…私のことを好きだなんて…。

「…バレちゃ仕方ねぇよね」
ウンウンと、諦めたように頷いて、私を見つめて笑っていた。

「俺、昔から咲良のこと、まぢで好きだからよ…それだけ言っとく」

「何よ、それ」
その告白の仕方に、私は不満だった。

別に、明徳のことが好きって訳じゃないけど、こんな告白ってあるの?

「悪いけど、私…明徳のこと、そんな風に思ってないから」
アッサリと、切り捨てた私に…真面目な表情で、「…葵って、男が好きなんだな?」

「違うわよ…」
ぷいっと、素っ気ない態度に、ムキになった明徳。

「俺は、あんな奴に負けないからな」


本当は、ちょっとだけ、ときめいた…と思ったのは、私の中に閉まっておこう。

葵をライバル視して、見ている明徳を見て半分呆れながら、ちょっと楽しそうと思っていたのだった。

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