トリックス☆スターズ
「ベニトさんは鬼を見たことがあるんですね」

クリーダは村長から聞いた適当な鬼情報を補填しようとしているのかな?
それにしても、子供に対して「~~さん」って言うのはどうなんだろ。

「当ったり前じゃん!見たことあるよ!!
 すっごい強くて大きいんだぜーーッ!鬼!!」

「それはどの位の大きさですか?」

「街の入り口に2本木があるだろ?それの倍位はあったな」

村の入り口の木ねぇ・・どんなだったかな、全然気にしてなかったよ…木だけに。

「それは大きいですね
 鬼が暴れている所も見たのですか?」

「あぁ、見たさ」

「その鬼はどうして暴れていたのですか?」

「そんなの知らねーよ!鬼に聞けばいいじゃん」

「そうですね、直接聞いてみる事にします」

そう言ってクリーダがまた微笑むと、ベニトはまた頬を染めた。

『おんやー?顔が赤いって事は~、もしかしてベニトはク…じゃなくて、氷女が好きなのかんにゃん?』

「うッ、、うるさいッ!そんなんじゃねーよッッ!!!」

何かうつむき加減になっちゃって、やっぱり子供って素直だねー!
この子の初恋の相手はクリーダだったりして、ベニト本人はゲジゲジの仲間の氷女って思っているから残念だけどさ。

『じゃぁ、ベニトは誰が好きなのか言ってみるのだんにゃん
 やっぱりあたしかんにゃん?』

「バァーカッ!お前みたいなチビな訳ねーだろッ!」

『なぁ~にぃ~ッ!?あんたの方がもっとチビだんにゃん!』

「バァーカッ!バァーカッ!へっへーッ!」

『こら待つのだんにゃん!』

あたしはとんだ失礼な事を言う、ワンパク坊主のベニトを追いかけ回してやった。
小さい子に言われても「な訳ねー」って辺りはちょっとキズ付くんだよ。

「結構お似合いですよ、娘ネコさん」

って言うクリーダって、ちょっと本気で言ってそうな気もするナァ。

あたしとクリーダと出会ってまだ日が浅い訳けど、まだ彼女が何を考えてるかよく分からないんだよ。
穏やかな口調の奥で、すっごい闘志が燃えてる時があるのは分ったけどね。

思えばクリーダって結構近くに住んでたみたいなのに、なんであたしは彼女の事を知らなかったんだろ?

ドラド村の夕刻は少し騒がしかった。
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