世界で1番愛してる



「どうぞ座って下さい。

お嬢さんもどうぞ?」


笑顔が柔らかい優しそうな河原先生。私がママに付いて行っても何も言わずに迎え入れてくれる。



「順を追ってご説明します。」


カルテと分厚いファイルをテーブルに置いて、ゆっくりと話し出す河原先生に私もママもただ黙って頷いた。



「まず……涼太くんの病気はやはり骨肉腫でした。詳しい検査結果では……右の太ももの骨がまず最初の発症だと思われます。」


できるだけわかりやすい言葉で話してくれる先生が有り難かった。

難しい専門用語を話されたところでまずわからなくて、首を傾げてしまうだろうし。



「骨肉腫は骨にできる癌の一種です。若年層…10代や20代に圧倒的に多く見られ………何より…、進行が恐ろしく早いのが特徴です」


遠回しではなく、わかりやすく直球に話す先生。

―――…なんとなく、わかってはいた。



骨肉腫は若年層に多い。
細胞分裂が活発な若年層の人が掛かれば…進行だって早い。

あっと言う間にレベル4まで行ってしまうだろう。



「癌は大まかに五段階に分けられます。レベル1からレベル5…レベル4まで到達してしまった場合、五割近くの方が亡くなられます。」


そうだ。お兄ちゃんは最初の宣告ですでにレベル4だった。
手術もできない、ただ命を繋ぐためだけに抗がん剤や放射線を使用する。

それが、医療の限界だった。



「っ……涼太…は……」

「………残念ですが…既に他の臓器への転移が見られます…、腎臓、肝臓、肺への転移が認められました。」

「そんな…っ、じゃあ涼太はどうなるの!」


ママ…

ママはわかってるんだと思う。


昨日、持った希望が小さな事だったって。



< 23 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop