世界で1番愛してる
「リョウって結構モテるから…大変かもしれませんけど、何かあったら私力になりますから!」
「……ありがとう、愛さん。」
「呼び捨てで良いですよー。私たぶん年下なんで。」
あぁ、どうして愛さんが可愛いって思うのかわかった。
妹みたいなんだ。
上に姉しかいないけど、妹がいたらこんな感じなんだろうなぁって思う。
「おいこら!俺のシズ取らないでくださーい。」
「男の嫉妬は醜いぞー?」
「うるせっ!シズ、愛はな……こう見えて…」
腰に回った腕に擽ったさを覚えながら、涼太が次に何か言うのか耳を傾けた。
「小悪魔だからな?」
「……小悪魔?」
「そうそう。無自覚小悪魔。余計にたち悪いからあんま近づくなよ!」
本気で言ってたら涼太にでも私は怒ったかもしれない。
けど、これが、こんなやり取りが涼太達の挨拶みたいなものだってわかってるから笑えていた。
何かしら闇を抱えるここにいる人達にとってこの瞬間が現実から一時的に避難できる場所なのかもしれない。
カラオケを出れば現実に戻らなきゃいけない。
だから、この瞬間を大事にしてるし、仲間を大事にできる。
人として、未成年だけど…
そこらにいる大人より大人なのかもしれない。
「シズさん……あんな奴だけど、リョウはシズさんが大好きなんですよ?だからリョウをお願いしますね!」
年下のはずの愛さんは私よりずっと大人の考えを持てるのかも。
私は涼太を一度横目で見てから大きく頷いた。
「ありがとう、愛ちゃん。」
愛さんではなく、愛ちゃん。
今の私の中の精一杯の呼び方を。