君を

12








「すなお」


明るい声が呼んでくれる。
暖かい日差しを受け、膝の上に乗せて読んでいた本から顔を上げる。

「まぁた難しい本読んでぇ体調は大丈夫なの?」

本を一瞥してから、ベットの端に腰掛けて、顔を覗き込まれる。

「ご飯は?食べてる?」

昨日と同じ事をまた言われる。

くすり。
思わず笑みが零れる。

「羽夏さん、昨日もそれ言ったよ」
「だって、すなおがちゃんと食べないからじゃない~」

おどけて、軽く上半身を揺さぶられる。

「食べてるよぉ、今日はご飯を少し残しただけで、後全部食べたよ」
「ホント?偉いじゃ~ん」

ぱっと、笑顔に変わる。
私の表情まで、心まで明るくしてくれるような笑顔。


「ま、すなおのご飯には負けるから食べたくないのも分かるけど、食べないと退院できないからね」

今日一日の授業の内容が書かれたノートを取り出しながら、羽夏さんが喋る。




「あ~すなおのお味噌汁と煮物とご飯が食べたい~」


手足が長く大人びたハーフ顔の羽夏さんは、食べ物の趣味は古風だ。


「もうすぐ退院出来ると思う」


もう異常はない。
というよりもともと異常はない。




この、小さなストレスも過敏に反応するよう慢性化してしまった体が悪いのだ。



























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