ぼくたちは一生懸命な恋をしている
隼くんに手を引かれてやって来たのは、水辺の景色が見渡せるベンチだった。乗り物の近くだけど、ここだけ人が少なくて、ほっと息がつける。
二人で並んでベンチに座ったら、隼くんが見たこともないような真面目な顔で「あいりちゃん」と呼ぶから、私は背筋を伸ばして「はい」と答えた。

「これ。プレゼントだよ」

ラッピングが解かれて、白い小さな箱から現れたのは。

「わぁ、綺麗!」

キラキラした金色のハートのネックレス。よく見ると、ハートの縁に小さな宝石とさりげないキャラクターのマークがついてる。あまりアクセサリーに詳しくない私にも分かるくらい、とても高そう。

「こんなに良いもの……」

「受け取って。初めての贈り物だから、がんばって選んだんだ」

「でも私、なにも用意してなくて」

「いいんだよ。これをつけて、ずっと俺のそばにいてくれたら、それだけでいい」

隼くんは、抱きしめるみたいに腕を回して私にネックレスをつけてくれた。

「うん。似合ってる」

優しい笑顔に、胸がいっぱいになる。この男の子は、こんな私のこと、ほんとに好きでいてくれてるんだ。

「ありがとう」

首元に、ほんの少しだけ感じるはじめての重み。
嬉しいのに、なぜだかまた泣きそうになった。


集合時間に遅れてしまった私たちを、みんなそれぞれの表情で待ってた。丈司お兄ちゃんは怒ってたけど、マリアさんが茶化すから、円香ちゃんも苦笑いしてて、なあなあになって許してもらえたみたい。
駿河くんは、なにも言わなかった。怒ってもないし、いつもみたいに笑ってもない。ただ時計を気にしてうつむいてた。


夕方まで遊んで、渋滞の帰り道。運転してくれてる駿河くんには申し訳ないけど、疲れにうとうとして、夢をみた。
それは人魚姫のお話で、駿河くんは王子様、私は人魚だった。
王子様は、出会ったときからずっとかっこよくて優しい。でも私は王子様への恋しい気持ちが募りすぎて、心がどんどん醜くなってしまう。そもそも、私は人魚で人間じゃない。

結局、王子様は心まで綺麗なお姫様を見つけて私から離れていった。

あらためて思い知る。駿河くんには心も姿も綺麗な完璧な女の人が似合う。どんな形でもいいからずっと一緒にいたい、なんて性懲りもなく望んでいたけど、それが現実的でないことくらい幼い私にだってわかる。
駿河くんは大人で、私は子ども。
どうあがいたって駿河くんには選んでもらえない。
駿河くんは、遠くない未来、私から離れてく。
それならいっそ、この気持ちを抱えたまま泡になって消えてしまいたい。

「あいりちゃん、大丈夫?」

目が覚めたら、泣いてた。

「悪い夢でもみた?」

心配そうな円香ちゃんに、なんでもないの、と嘘をついた。
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