ふたまた彼氏

始まりの合図




「そーよね?」


突き詰めるように
問いかける母


「そーだ…けど」


キラキラと輝く母の目
もうなんとなく
言い出すことも伝わる


「やっぱりあんた…


「なんもないってば!」



言葉を遮り
精一杯平然を装う。


「そんな関係じゃないって、

あんなイケメン





付き合うはずないじゃない。」



精一杯笑った


気付かれたくない


言えるはずがない




「美紅パパに似て



整った顔してるから


モテるはずなんだけどなー」




まじまじと話すお母さんは
興味深そうな顔をする。




あたしの父は単身赴任で
家にはいない。



父はロシア人のハーフ



少なからずとも私には
ロシアの血が流れる。



父譲りの長いまつげ
母譲りの白い肌
父譲りの大きな瞳
母譲りの小さな唇と
小柄な体。




凄く恵まれた顔だ。




「元ミスパリが何言ってんの



あなたに比べたら
全く可愛くないよ笑」




可愛くない言い方



可愛くない振る舞いや
言葉遣い





母を全て受け継ぎたかった




不意にそう感じる。





「まーその人と



どーにかなったら



あたしにも教えてね」




「わかってたよー」







そう言い残すと
階段を上った。







言うはずがない





言えるはずがない



















相手は彼女がいる男
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