◆あたしの砂時計◆

★止まった時間


 将来の夢もなく、カバンに教科書だけを詰め込んで、いつもと変わらない毎日が今日もやって来た。

 見上げた空は灰色。

 シトシト、と細く糸の様な雨は、余計に心を惨めな気分にさせられる。

 何とかは、気からとか言うけれど、こんな日に良いことが待っているとも思えない。

 そんな気持ちで、トボトボ、と歩いていると


  バシャァ。

 ほらね。水溜まりに勢いよく突っ込んだ車からの泥をお見舞いされたし。

 手にしていた傘は突風で逆さまになるし、

 やっぱり良い事なんかないんだね。

 クスン。



「ちょっと、そこのお嬢さん」

 まさか、あたしじゃないよね?

 辺りを見回してみたけど、他にこの通りを歩いている人はいない。


「……あたし、ですか?」

 恐る恐る、顔をこの如何にも怪しげなオーラを放つ老婆に、顔を向けた。


「悩んでいるのじゃろう? これでも舐めてみるといいよ」

 ペロペロキャンディ?

 今時の小学生だって、こんなものに釣られる人……いないよ。


「結構です。からかうなら他の人に声を掛けてください!!」

「そうかい。また後悔しても知らないよ?」

 ……また?


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