『クルマとタバコとカンコーヒーと…』【リアル物語ケータイ小説版】
第80話

 翌日、4月23日。一つの選択が迫られた。

医療ビザでのフライトでは、もし患者の状態が急変して飛行を中断したり、別の空港に着陸した場合はその費用を全額負担するというものなのだが了承できるか?ということが当日知らされた。

そんなこと言われたって選択できる余地などない昭太郎は承諾した。

(全額負担っていくらだよ!イジでも飛行を中断しねぇ、吐こうが何しようが言わずに辿り着いてやる)

そんな余計な決意もしながら搭乗手続きを終えた。


成田空港には大勢の人々が見送りに集結した。
学生時代の同級生達、会社関係の人々、親戚、そしてニコモン。
多くの人々が昭太郎の出国を見送った。
笑顔で見送った。

笑顔で応えた昭太郎は泪を見せることなく、痩せた手を大きく振った。


 終わりの見えないロングトリップが始まった・・・。



 【あの時僕はもう一度この場所に帰ってくると誓いながら、これはドラマじゃないんだ、ドラマなら1時間後に『1年後』とかのテロップが出て終わってしまうのだけど、ドラマじゃないから一日一日ちゃんと過ぎて、ズルもワープもできないんだと考えた。
神様の脚本がハッピーエンドであることだけを願い、リアルに負けないように歯を食いしばっていた。】

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