好きだけじゃ足りない




「大丈夫かな…所長達…」


飛行機に乗って、離陸してからふと気になるのはやっぱり仕事の事で思わず口にしてしまう。

隣に座る伊織はそんな私に苦笑いをして少し乱暴に頭を撫でて来るから髪の毛が酷い事になっていそうだ…。



「ちょっと伊織!」

「仕事から離れるのもたまには良いだろ。お前、働きすぎ。」


ペチンと軽く額を叩かれ、怨みがましく睨みつければ今度は盛大に笑われて余計にムッとしてしまう私は子供なのかもしれない。



「たまには息抜きしたって罰は当たらねぇよ。」

「でも…伊織は仕事なのに私だけ遊びに行くのってなんか…ね。」

「仕事?んな訳無いだろ。」


隣から聞こえた声に首を傾げてしまったのは致し方ない事だと思う。

沖縄に行くと聞いた時は、伊織は出張だと聞いていた。

それなのに…仕事じゃない?
一体それはどう言う事だと睨みつけてもケロッとしたまま私を含み笑いしたまま見ている。



「仕事なのは今日と明日。あとは休み。」

「ちょっと待って…、アンタ嘘ついたの?!」

「嘘?嘘ではないだろ。二日間は仕事なんだし。」


にんまりとしてやったり顔な伊織にこめかみを押さえたまま深いため息を吐く。

私はコイツにしてやられてしまったようだ…。


――…ペテン師がいる…っ!


悔しいやら呆れるやら、どうにもこうにもため息しか出てこなかった。



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