好きだけじゃ足りない


ずっとずっと神様なんかいない、いたら怨んでやるって思っていた。

だけど今は神様を信じるし、感謝だってするよ。



「泣くなよなー。社長室行けねぇだろ。」

「うっさ…い、もう泣いてない!」

「泣いたのバレバレだけどな。

あー…アイツにも見せたくねぇのになぁ。」


暖かい腕で私を抱きしめたまま、私の頭に顎を乗せてブツブツと呟く伊織に若干首を傾げながら言葉の意味を考えた。



「アイツって?」

「………会えばわかる。」

「いや、意味わかんない。」


付き合いが長いと言うのも若干困りものかもしれない。
何かを隠すとか、何か気まずい事があるとか…それがすぐにわかってしまうものだから。



「ねぇ…」

「百聞は一見に如かず!」

「は?意味わかんないって!」


な、なんなの…コイツ。

急に諺を言いながら、私の手をぐいぐい引っ張って奥にある社長室のドアをノックもなしに蹴破る勢いで開けてるし。

いやいやいや……社長室だよね?
会社ですごく偉い人の部屋なはずだよね?

多分、今の私は顔面蒼白も良いところだと思う。



「おーす、呼んだか?」


ほんとに…何なんだろう。
社長にそこまでフレンドリーな社員がいて良いんだろうか。



「あぁ、この書類…………ん?メグ?」

「は?…………あ、拓海さん?」


目が点。

人生で初めて目が点になった自信があります。



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