左肩の重み~美香story~
そんなことされたら、余計に涙が止まらなくなる。


でも、いつまでも泣いてるわけにはいかない。


だから私は大丈夫ですの意味を込めて、最後に笑顔を作った。


それから佐伯さんは、ほんの少しだけ私に目を配ってくれるようになった。


自分から聞けないという、私の性格を理解してくれてるみたいだった。


だから私も、佐伯さんだけには恥ずかしいという感情を捨てようと思った。


それと同時に、ああこの人なら私のことを分かってくれるかもしれないという、安心にも似た感情が生まれた。


「原田は、仕事好き?」


ある日佐伯さんと一緒にランチをしてるとき、唐突にこう聞かれた。


「嫌いじゃないです」


これが本音だった。


別に私は、仕事でなにか成果を上げようとか、出世したいとか思ってるわけじゃない。


それ以上に今は、大学のときに借りた奨学金を返さないとという思いでいっぱいだった。


大学に通うのに、親に負担を掛けないようにと借りた奨学金。


ちゃんと返さないと気が済まないから。
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