DislikeMan~男なんて嫌い~
今度は、来たときと逆の位置に座って、私が窓の外を眺める。
ふと視線を感じて振り向いた。
『あ』
視線の主は卿渓さん。
卿渓さんと目が会ったっていうことの私の"あ"。
私にバレたっていうことの卿渓さんの"あ"。
二つの"あ"が微かにずれたタイミングで重なった。
「……なんでしょう?」
私にバレても、視線を外すことのない卿渓さんに疑問をぶつける。
「いいえ、なんでもないです」
なぜ急に敬語なのかわからないけど、彼はそう答える。
なんでもないのに、人を見つめるもんかね?
素朴な疑問が頭をよぎったけど、そこは深く追求しないことにして、また顔を窓側に向ける。
来るときとは違う路線のバスなので、全然違う景色が見える。
といっても、もう外は暗いから、外の景色はほとんど見えない。
見えるのは、街灯の明かりと窓に反射する私の顔だけ。