兎心の宝箱【短編集】
「た……、頼もーう!」

 平穏な時間の筈だった。

 放課後を迎え、みんながゆっくりと帰る準備をする時間。

 俺は、友達の神谷と話しながらカバンに荷物を詰め込んでいた。

 バタン!

 突然放たれるドア。

 皆が注視する中、一人の少女が立っていた。

 肩の辺りで切りそろえられたストレートの髪。

 猫科を思わせるような大きな瞳。

 全体的に華奢な感じのする少女。

 だが腕の締まり具合や、スカートの裾から伸びる力強くそれでいてしなやかな足が、鍛えあげられている事を物語っている。

 その少女が顔を真っ赤にしてこちらを見ている。

 そして先程の言葉をさけんだのである。

 その瞬間俺の平穏な時間は、終わりを告げた。
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