聖霊の宴

サスケの右腕からの出血。

パタッと小さな音をたてて一滴の血が地面を突いた。

「あれをくらってかすり傷かい?

嫌になるね、全く」

ワイズは半ば呆れたかのような声を出した。

しかし、サスケの胸中は穏やかではなかった。

「拙者にに傷をつけるだと?

許さぬぞ!」

「なっーー!?」

音もなく忍びよるサスケの縮地とは違う。

あまりの脚力に畳が弾け飛ぶ。

一瞬にしてワイズの前に現れたサスケ。

ワイズは反射的に翡翠の翼を纏い盾を作っていた。

もし、冷静なままのサスケであったら翡翠の翼を見て即座に攻撃を中止し、他方向から隙を作ることを選んでいただろう。

「な、なんだこの力は!」

だが、サスケは翡翠の翼の上から日本刀を叩きつけた。

いつの間にか霞も晴れている。

霞に回していた微力な魔力さえもを自らの攻撃力を増加させることに費やすサスケのそれは、今までの比ではなかった。

「ぐっ、がぁぁぁあっ」

強力な風の翼は日本刀を通しはしないが、決定的な力量の差がミシミシと音をたてながらワイズを地面にめり込ませていく。

『嘘よ。こんな力任せの攻撃で……


ワイズが押されるわけ』

「くっーーーー」

大きな土埃をたてながらワイズが地面に叩きつけられた。

『ワイズ!!!』

仰向けで地面にめり込むワイズの頭上で、冷徹な瞳でサスケが立っていた。

ゆっくりと刀が振り上げられていく。

「山の様に静かな男だと思っていたが、その皮の中は火のように全てを蹴散らす化物か」

サスケは冷たい目でワイズを笑う。

「終わりだな大陸王。

我が愛刀の錆となれ」

無情に降り下ろされる刃。

『ワイズ!!

逃げてワイズ!!!』

身体ごと地面に打ち付けられたワイズにサスケの刃から逃れる方法は一つも無かった。

「シルクーーすまない」

そう、ワイズが呟いた刹那。

目映い光がサスケを撃ち抜いた。




< 296 / 406 >

この作品をシェア

pagetop